
お金がなくぼろぼろの洋服を着た二人の男が、公園のベンチに座っていた。彼らは今までのいろんな苦労を話し合っている。最後に一人が言った。「おれが失敗したのは、だれの忠告もとりあげなかったからだ」これに対してもう一人は答えた。「おれは、みんなの忠告をきいてダメになったんだ」
この二人は二つの極端な例を表わしている。極端はいつも困ったことになる。忠告などいらないと思う人は愚かだが、受けた忠告全部に従おうとする人も同じである。慎重な人は他人の意見を注意深く聞き、それを実行する前にそれぞれの意見を自分の経験に照らして判断する。
失敗の原因になるもう一つの極端は、他人を喜ばせようとしすぎることである。多くの人を喜ばせようとするのは、もちろん望ましい。しかし、みんなを喜ばせるのは不可能であり、そうしようとすれば、たいていだれも喜ばせずに終わってしまう。よい例を示す映画監督がいる。彼はどの新人女優にも「君は今まで見た女性の中で一番美しい」と言うクセがあった。このおせじを初めて聞いた時、だれでも喜んだ。しかし、この監督はどの女優にも同じことを言うとわかった時、みんないやな気持になった。
ただ一つの安全な方法は、正直で誠実なことである。誠実な人は、ある人々と意見を異にして不愉快にさせることもあろう。しかし、親切心を伴った誠意があれば、反対の意見を聞いて喜ばなかった人でさえ、その人を尊敬するようになるものである。