お金のことは心配するな

Smile of the Sun - 太陽のほほえみイメージ

 A氏は最近、仕事で夕方東京に着きました。彼はホテルにチェックインし、夕食を食べ、早く寝ました。その夜、彼は不吉な夢を見ました。その夢というのは、A氏が自宅でテレビを見ていると、家の前で大きな音がして、ドアを開けてみると車が衝突していて、なんと妻がその一方の車を運転していて大変なダメージを受けていたのです。ぎょつとして妻が無事かどうか急いで車の方へ近づいて行った時、彼は夢から覚めたのです。

 無意識のうちに彼は受話器を取り、大阪の自宅に電話をかけると、A夫人が、眠そうな声で電話にでました。

 興奮しているA氏は思わず、「幸子か?」と叫びました。A氏のただならぬ様子にびつくりした夫人は眠けも消え失せ、「はい、私よ、どうかしたんですか?」と尋ねました。するとA氏はうれしさのあまり、「幸子は世界一すばらしい」と言ったのでした。A夫人は「あなた酔っていらっしゃるのね」と言いました。夫がこんな愛情深いことばなど、ここ数年来言ってくれたことがなかったからです。

 A氏はこの数日間はお酒は一滴も飲んでいないことを言うと、彼の見た夢を夫人に話しました。A氏が話し終えたころ、A夫人は夫の優しい思いやりがうれしく目に涙をためていましたが、あまり長話になつたので電話代のことが気になり始めました。

 A氏は、そんな夫人に、「お金のことは心配するな。世の中にはお金で買えない大切なものがあるのだよ。あしたはできるだけ早く帰るからね」と言いました。

 電話を切った二人は、なかなか眠ることができず、これまでどれだけ多くのことを、まるで当然だといわんばかりに受け取っていたかを考えていました。