赤ん坊が生まれるだけ

Smile of the Sun - 太陽のほほえみイメージ

 世界中の多くの国々に、インターナショナルスクールがいくつかある。生徒はおもに、外交官やあちこちの国から商用で来ている人々の子供たちである。
 スペインにあるこんな学校の一つに、良心的な歴史の先生がいる。彼女はどの国の歴史もできるだけ好意的な見方で教えるように努め、それぞれの生徒の心に、自分の国への正しい誇りをもたせるようにしている。
 そこで、歴史の試験に特別な質問を付け加えた。「あなたの祖国で生まれた偉大な人 はだれですか」
 たいていの生徒は、先生が予期したような答えを書いた。それぞれの祖国で生まれた大統領、総理大臣、科学者、発明者などの名前をあげたのである。
 しかし2人の生徒が違った答えを書いた。先生はこの10才の子供たちは質問を読み違えたのだろうと思った。しかし同時に、考えさせられた。
 1人の生徒は、自分の父親の名前だけを書いたのである。彼の父は偉大な人としてその名前が歴史の本にのることなどなさそうに思える。しかしその子にとっては、父は偉大なのである。もう1人の生徒はこう答えた。「僕の国では偉大な人なんか生まれません。赤ん坊が生まれるだけです」これを読んだ先生は考え込んだ。
 この子の答えは正しい。人は偉大な人間として生まれるのではない。偉大な才能の芽は、生まれた時からあるにしても、偉大さは、その才能を伸ばすためにたゆまない努力がなされてこそ、得られるものなのである。