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不要な物を取り去ることで見えてくる

毎月のお便りイメージ

 あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。
 今年最初のお便りで「見えてくるもの」を考えたいと思います。

 「長崎二十六聖人殉教者像」や「原の城」の作者として知られる彫刻家の船越保武氏は、「彫る」ことについて次のように述べています。「自分の求める顔が石の中に埋もれて入っています。顔を包んでいる周りの部分を取り除けば顔が現れるのです」と。

 夏目漱石の小説『夢十夜』の「第六夜」にも、よく似た記述を見つけました。夢の中で、仏師の運慶が見事な仁王像を刻んでいる姿を主人公が見物しています。すると隣の人が「運慶は、木の中に埋まっている仁王を掘り出しているだけだ」と話す場面です。

 私は昨年まで18年間中学高校の校長職にありました。校長就任のお祝いとして、先輩方から十字架像をいただきました。よく見かける、十字架の前面にキリスト像が貼り付けられたものではなく、十字架を彫り込んで、十字架の内部にキリスト像が埋め込まれた珍しい物なのです。このキリスト像は、校長室で私を見守り、励まし続けてくれました。
 校長就任当時、不安でいっぱいでした。「決断力が足りない」「英会話を勉強しておけばよかった」・・・。あれがない、これが足りないと、ない物ばかりが膨らんで、目の前が真っ暗になったことを覚えています。そんな時、この十字架像が私を力づけてくれました。

 「大切なものが見えないのは足りないからではなくて、人の評価や傷つくのが怖いなどの、不要なことに心が奪われているからだよ。要らないものを取り除けば、この十字架像のように、なくてはならない大切なものが見えてくるのだよ」と。

 =主は「わたしの恵みはあなたに十分である。力は弱さの中でこそ十分に発揮されるのだ」と言われました。だから、キリストの力がわたしの内に宿るように、むしろ大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう。=(コリントの信徒への手紙Ⅱ12章9節)

 聖パウロに倣って、謙虚に人や物事に接するよう心掛けたいと思います。不要な物を捨て去ることによって、神様からいただいている賜物が輝きだすと信じて歩んでいきたいと思っています。

心のともしび運動 阿南孝也