生前ハヤット神父が書いたお話「太陽のほほえみ」(英語と日本語)を、
2015年5月掲載分から2021年3月掲載分まで保存しています。どうぞご覧ください。

大学教授をしている友人が、最近、風邪をひいた。彼はその朝は講義をしたくない気持ちだったが教室に入った。
講義を始めようとしたとき、教室に新入生らしい学生がいるのに気がついた。ところが、この学生がノートをとり出したのを見て、彼はひどく驚いた。点字で書かれていたのである。
「僕は特別な場合に直面したんだよ。この青年が講義を理解するには、僕の声にたよるしかないわけだ。黒板に書く説明が読めないのだから。講義を進めながら、からだ中に新しい力がみなぎるのを感じたよ」
「こういう人に教えるのは、全く初めての経験なのでね」と友人は話し続けた。「あとで気がついたんだが、明るい暗いの区別はどうにかわかるらしい。しかし、彼は全身の注意を集めて僕の声を聞いている。気がつくと、僕は言うことにいちいち注意し、言葉もはっきり言うようにしていた。熱心に学ほうとする学生の前で、講義に身をいれないではいられなかったのだよ」
友人の言葉は続く。「この新入生の出現で、僕だけでなく、教室中が影響を受けたのだ。学生たちは、新入生の学ほうとする意欲を感じ、また、僕自身に起こったことにも気づいたらしい。このクラスは、今までそれほど注意深く講義を聞いたことはなかったのに、そのときには、近くの者としゃべったり、ノートに漫画をかいたりする者は一人もいなかったよ」
「新入生のために、わかりやすく講義をしようと務めている僕に、みんなの目がじっと注がれていた。授業が終わると、何人かの学生は、ノートの整理や宿題を手伝おうと、新入生に申し出てね、僕が教室を出るときには、彼のまわりを取り囲んでいたよ。僕は、風邪のことはすっかり忘れてしまっていたんだ」