生前ハヤット神父が書いたお話「太陽のほほえみ」(英語と日本語)を、
2015年5月掲載分から2021年3月掲載分まで保存しています。どうぞご覧ください。

ハヤット神父
ハヤット神父

 

医者の仕事

Smile of the Sun - 太陽のほほえみイメージ

 「医者は、病気が治せるだけではなく、人々に、死に対する心がまえを持たせるために役立たなければなりません」

 こう言った人自身、医者であった。彼は医者という職業の欠陥について、同業者の集りで話していたのである。

 「病気を防ぎ生命を保つのが、私たちの仕事の目的です」と彼は仲間の医者に話した。「この目的を達成するために、努力を傾けるのは当然です。 しかしそうすることによって患者に、 死に対する間違った態度を教えていることに注意せねばなりません」

 「私たちの努力にも拘らず、すべての患者はいつか死に直面するという事実を、私たちは認めるべきです。命を長らえさせようと努力するうちに、もし患者に死は醜いものという印象を与えたり、必要以上に死に対する恐怖心を植えつけたりすれば大変悲しいことです」

 「私の考えでは、医者は二重の役目を持っています。まず、力の限りを尽くして、患者が健康で幸福な生活を送るようにする必要があります。しかし、患者に死期が近づいた時は、慰めが与えられるようでなければなりません。臨終に際しては、後の世のより大きい幸福への希望と、旅路における冒険への期待を持たせるように努力するべきだと思います」

 この医者が言ったように、死は人が経験することのできる最も大きな冒険である。神秘的な要素が含まれていて、この世で味わったよりはるかに大きい幸せについての約束などによって満たされている。私たちがこの世を去る時、恐怖よりむしろ希望が私たちの生涯で最も大切な旅路への出発となるはずなのである。