生前ハヤット神父が書いたお話「太陽のほほえみ」(英語と日本語)を、
2015年5月掲載分から2021年3月掲載分まで保存しています。どうぞご覧ください。

ハヤット神父
ハヤット神父

 

内側から

Smile of the Sun - 太陽のほほえみイメージ

 弟子の一人が感嘆の面持で見ている前で、一心不乱に画家が大きな絵に最後の筆を加えている。青年は、年老いた画家の筆さばきの見事さを驚きの目で見ていた。

 絵には石造りの邸宅の入口が描かれている。扉はがんじょうな木材で作られ、丈夫な金属の蝶番で建物にとりつけてある。絵筆は堅固な建物を描き出していた。戸口のところまで道が続いている。道の片側には繊細なタッチで花が描いてある。反対側にはトゲのある木の茂みがあった。

 扉の前には一人の男が立っていた。彼は、長くゆるやかな白いローブを着て、右手は扉を叩く高さにある。

 花は人生の喜びと美しさを現わし、トゲは苦しみを示す。扉は人間の心を象徴し、扉を叩く人はキリスト、つまり救い主である。

 青年は一心に見ていた。彼の目はキャンバスの上を眺めまわしていたが、突然、ある個所で止まった。"先生は間違ったのか?"と彼は思った。「ドアをあける把手がありませんが......」

 「その通りだよ」と画家は答えた。「把手はいらない。キリストがノックすると、ドアは内側から開けられるはずだ。キリストは招き入れられるべきなんだよ」

 人はだれでも自分の心の支配者である。心を開こうと開くまいと自由である。神はこの人間の自由を尊重するところから、無理に人の心に押し入ろうとはしない。招かれた所だけに入る。扉は内側から開かれるべきなのである。