生前ハヤット神父が書いたお話「太陽のほほえみ」(英語と日本語)を、
2015年5月掲載分から2021年3月掲載分まで保存しています。どうぞご覧ください。
作曲の勉強を始めたばかりの青年が、自分の勉強について教えを乞うために、大作曲家モーツアルトを訪れた時のことである。青年は会うとすぐ交響楽を書くにはどうすれば良いかを尋ねた。なぜなら、青年はすぐに交響楽を書きたいと思ったからである。
するとこの青年に向かってモーツアルトは言った。「君にはまだそれをするだけの下地が出来ていない。まず作曲の基本をマスターすることですね」
この言葉に青年は反発した。「でもあなたは僕ぐらいの年に交響楽をお書きになったじゃありませんか」「それはそうだが、私はいかに書くかなどとは誰にも聞く必要はなかったんだよ」とモーツアルトは答えた。
誰もが知っているように、モーツアルトは天才である。いつの時代にも天才はいるが、彼らは驚くべき早さで知識を吸収し、芸術にしろ、科学にしろ、普通の過程を経ずに、非常に若い頃にその神髄に達してしまう。
しかし、真の天才は稀である。我々大部分は普通の人間であり、一歩ずつ進歩することで満足しなければならない。それは苦難の道であろうが、成功への確実な道でもある。
人生において、成功することとは高いビルを建てるのに似ている。まず基礎工事をしっかりすることであり、そうすればするほど、より賢固な高いビルを建てることが出来るのである。もし、建築会社がしっかりした基礎工事もせず摩天楼を建てようとすれば、重大な過ちを犯すことになる。それと同じように、自分の選んだ職業の基本的なことも会得せずに成功や名声を得ようとしても、それは不可能なことなのである。