沈黙の価値

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 古代ギリシャの偉大な哲学者であり、教師でもあったソクラテスは、ある時、一人の青年に雄弁術を教えてほしいと頼まれた。その青年は非常な自信家で話し好きだった。何か考えるとすぐ口に出すので、ソクラテスの講義を途中でさえぎることもよくあった。

 しかし、ソクラテスは我慢して教え続け、その青年に、当時、雄弁家になるのに必要だった練習をさせ、訓練した。一連の講義が終わった時、彼は普通の2倍の授業料を要求した。青年は文句を言った。「なぜ僕はほかの人よりたくさん払う必要があるんですか?」ソクラテスは答えた。「君には二つのことを教えなければならなかったからです。話し方だけではなく沈黙の仕方も教えました。」

 "しゃべっていては学べない"という意味の格言がある。すなわち"沈黙は金"と言う。話すべき時と沈黙を守るべき時とがあり、賢明な人はその違いを知っている。

 学ぼうとする学生には、沈黙が必要である。また、友だちがほしいと思う人や、他人に有益な影響を及ぼそうとする人にも、沈黙は必要である。しゃべりすぎる人は、大抵、敬遠される。

 その反対によい聞き手、つまり、沈黙の仕方を知っている人は、慰めと忠告を与えてくれる人として、喜んで迎えられる。こういう人が話すとその言葉は尊重される。深い考えに基づいた言葉だからである。

 ソクラテスは講義を通じて、青年に雄弁術を教えた。そして、2倍の授業料を要求することによって、もっと大事なもの、沈黙の価値を教えたのであった。