他人の欠点は・・・

Smile of the Sun - 太陽のほほえみイメージ

 アメリカのある大きい製造会社の社長の所へ、最近、甥がたずねて来た。その会社へ就職したいというのである。社長はこの甥を高く買ってはいなかったが、すぐに追い返すこともできないと思ったので、就職申込用紙を差し出して言った。「必要事項を記入しなさい。何とかしてみょう」

 甥が帰るとすぐ、社長はその就職申込用紙を破り、屑かごへ捨てた。自分が信頼していない人にわずらわされたくなかったのである。

 しかし、しばらくすると、あまりにも気短かなことをしたようで、きまりが悪くなり〝少なくとも、ほかの青年たちと同じチャンスを与えてやるべきだな、そうだ。人事部長に申込用紙を渡してやろう″と考えた。そこで、家へ帰る前に、昼間破って捨てた甥の申込用紙を屑かごから拾い集め、机の上へ並べた。そして新しい用紙に、必要事項を自分の手で記入した。次の朝、彼はその用紙を人事部へまわした。

 それから2、3日のちに人事部長から来た返事は、社長にとってショックだった。「この就職希望者が持っている資格は、大変仕事のよくできる人で

あることを示しています。しかし、筆跡鑑定家の報告は、よくありませんでした。青年の筆跡は、彼のけんか好きで横柄で、粗雑な性格を表わしているそうです。彼は会社に良い影響を与えないでしょう」というのが、部長の報告書の内容であった。

 筆跡鑑定家が指摘した欠点は、社長が一番嫌に思っていた点なのである。そして、調べられた筆跡は、甥のものではなかった。彼の伯父、つまり社長の筆跡であった。

 私たちの気分をとても悪くするような他人の欠点は、おうおぅにして、私たち自身が持っている欠点なのである。