それから2、3日のちに人事部長から来た返事は、社長にとってショックだった。「この就職希望者が持っている資格は、大変仕事のよくできる人であることを示しています。しかし、筆跡鑑定家の報告は、よくありませんでした。青年の筆跡は、彼のけんか好きで横柄で、粗雑な性格を表わしているそうです。彼は会社に良い影響を与えないでしょう」というのが、部長の報告書の内容であった。
筆跡鑑定家が指摘した欠点は、社長が一番嫌に思っていた点なのである。そして、調べられた筆跡は、甥のものではなかった。彼の伯父、つまり社長の筆跡であった。
私たちの気分をとても悪くするような他人の欠点は、おうおぅにして、私たち自身が持っている欠点なのである。