「心の糧」は、以前ラジオで放送した内容を、朗読を聞きながら文章でお読み頂けるコーナーです。

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坪井木の実さんの朗読で今日のお話が(約5分間)お聞きになれます。

小さな幸せ

越前 喜六 神父

今日の心の糧イメージ

 神父になる前の想い出ですが、学業を終えて、ある地方の中学校の教員に任じられた時の体験です。私は中学1年生、3クラス120名の生徒に社会科を教えました。

 学校は町の郊外の小山の中腹に建っていて、教員であった神父たちは校舎に隣接した別館に住んでいました。そこからは綺麗な瀬戸内海が眼下に広がっていました。

 朝、8時過ぎになると生徒たちが登校してきます。その姿を別館の窓から見ていると、何とも言えない幸福感が体中にみなぎってきました。どうしてだがわたしにも分かりませんでしたが、多分、生徒が好きだったからでしょう。

 私は、朝礼のときも授業のときも、授業以外の生活指導をしたので、校長先生からは「けじめをつけて指導しなさい」と言われていました。そこで、「授業は真剣に」「監督は厳しく」「課外活動は楽しく」という三箇条を遵守しました。ですから、授業はできるだけ分かりやすく教えるために、真剣に研究しました。また、生活指導や監督の時は、校訓に従って厳しく指導し、しつけました。しかし、クラブ活動や課外活動の時は、一緒になって楽しく過ごしたり、遊んだりしました。

 正直にその時の気持ちを話しますと、とにかく生徒と共にいることが楽しかったのです。楽しく幸せでなりませんでした。

 やがて、中2の終了時点で、27名の生徒がカトリックの洗礼を受けました。

 わずか2年間の体験でしたが、わが人生、最良の日々だったと思います。後に大学の教員になりましたが、正直なところ、この時ほどの幸福感を味わったことはありませんでした。

 どこに違いがあるのでしょう。子どもが可愛いいからでしょうか。

 今でもよく分からないのです。