▲をクリックすると音声で聞こえます。

今日を生きる

ハヤット 神父

今日の心の糧イメージ

 以前、死を目前にしている人たちの世話をしている方に会う機会があり、感動的な話を聞きました。

 彼女によりますと、死が近付くとその人たちは大変親切になり、周りの人たちのことを気づかって、いろいろのメッセージを伝えるそうです。「いのちを大事にしてください」「互いにゆるし合ってください」「みんなが幸せになるために、お互いに助け合ってください」などなどです。彼女は死を待っている時を「仲良し時間」と名付けています。

 彼女は死を目前にしている人たちの親切の実例をいくつか話してくれましたが、その一つに、5才で癌で亡くなったケンちゃんという男の子の話がありました。

 ある夜、一人の医者がケンちゃんの病室に入ってきて、「きようは先生、疲れちゃった」と云いました。するとケンちゃんはべッドの上の方へゆっくりゆっくりせり上がっていきました。体にはいくつもの管がついていて動きにくいにもかかわらず、ケンちゃんは枕もとまで体と手足を少しずつ縮めて引き上げ、小さく小さくなりました。まるで胎児のような形になったのです。先生がびつくりしていると、ケンちゃんは「先生、ベッドが広く空いたから、ここに寝てください」と云ったそうです。

 この人たちは死を待っている間、苦しんでいましたが、その試練の中で神様の光は輝いていたそうです。

 いつかは私たちも皆、死を迎えます。そしてこの人たちと同じような体験をするかもしれません。しかしその時を待つのではなく、元気な間に、日々心豊かな生活をするためにいのちを大事にして、お互いをゆるし合い、お互いに助け合って、毎日を「仲良し時間」にしたいと思います。

 

*アーカイブスを再収録しました