

随分前に、接遇の研修を受けた時に講師が話したことが心に残っていて、度々思い出します。それは、何回も同じことを尋ねられた時にどうするかという話でした。
お客様から時計を見せられて「これは何ですか」と尋ねられたら「時計ですよ」と答えます。また聞かれたらやはり、「時計ですよ」と答えます。三度目も、同じように答えます。「『何度言ったら分かるんですか、時計でしょ』と言わない。ただ『時計ですよ』と笑顔で答えてください」というものでした。
これを聞いて、人間ができていないとこんなことはできないと思ったものです。
そして今、認知症を患っている高齢の方たちと関わることが普通になってきて、あの学びを実践することが多くなりました。
10分の会話のうちに同じことを3回質問されることはよくあります。同じ物語を初めから聞かされることが何回もあります。でも、本人たちにしたら、それは今聞きたいことであり、話したいことです。だから、「さっきも言った」とか「もう聞いた」ではなく、時間が許すなら、何度でも答え、聞くことが大切なのだと思います。
先日、遠くまで新幹線で出かける機会がありました。帰りは電車が遅れて予定していた新幹線に乗れませんでした。帰ってから用事があったので焦りもありましたが、電車の遅延は仕方ありません。それなら車窓の景色を楽しんで帰ることにしようと腹を決めました。
私たちが生きているこの時間は「今」が連続していると考えると、今を大事に過ごすことが、人生を大事に過ごすことになります。
同じ「今」なら、焦らず、いらいらせず、穏やかな心で生きていきたいものです。