2024年03月のキリスト教の歴史


 昨年私は、カトリック学校の教員を主な対象とする「イスラエル聖地巡礼の旅」に参加してまいりました。 聖書に登場するエルサレムとガリラヤ湖周辺の街を巡りながら聖書世界を学び、 祈りながらの旅を通して神様とのかかわりを深め、子どもたちに神様をより良く伝えるための研修でした。

 しかし現在、イスラエルは報じられているようにとんでもない事態となっています。
 教皇フランシスコは10月9日、バチカンのサン・ピエトロ広場で訴えかけられました。 「・・・全ての戦争は敗北です。イスラエルとパレスチナの平和を祈りましょう」と。
 この連載を中止しようかとも考えましたが、1日も早い停戦への祈りを込めて、 巡礼でいただいた聖地での学び、気づきにつきまして、毎月一回、ご報告をさせていただこうと思っています。


聖地イスラエルでいただいた恵み

第六回 ヴィア・ドロローサ(ラテン語:悲しみの道)

 四旬節にあたり、皆様の黙想の一助となりますよう、私が現地で撮影した写真をできるだけ多く掲載させていただきました。

 死刑判決を受けたイエスは、十字架を担いで刑場であるゴルゴタの丘(原意「されこうべ」、ゴルゴタ:ヘブライ語、カルワリオ:ラテン語)に向かって歩み始められました。

 イエスが十字架を背負って歩いた道「ヴィア・ドロローサ(悲しみの道)」の出発地点である「ピラト総督官邸」は、エルサレム城壁東壁の「獅子門(ライオン門:ライオンの浮彫があります)」から入城して間もなくの「アントニア要塞跡」付近にあったと考えられています。
 ヴィア・ドロローサの始発地点と終着地点を含めた計14箇所には、留(りゅう)と呼ばれる中継点が設けられています。そこにしばらく立ち止まって、いのちをかけて私たちを救おうとされたイエスの苦難を愛と痛快の心をもって黙想します。
 約1kmの路地に第1留~9留があり、第10留以降は聖墳墓教会内にあります。

【第1留】イエス、死刑を宣告される

【第2留】イエス、十字架をになう
 「鞭打ちの教会」は、イエスがローマ兵に鞭で打たれたとされる場所の上に建てられた教会です。祭壇部分の天井は金のドームで、茨の冠がデザインされています。三面の壁のステンドグラスには、鞭打ちを受けるイエスの姿が描かれています。また、ピラトが有罪と定めて民衆に引き渡したとされる場所には「有罪判決の教会」が建てられています。

【第3留】イエス、初めて倒れる

【第4留】イエス、母マリアに出会う
 小聖堂入口の上部に、十字架を背負うイエスが聖母マリアに会った瞬間を描くレリーフがあります。

【第5留】イエス、クレネのシモンの助けを受ける

【第6留】イエス、ベロニカより布を受け取る

【第7留】イエス、再び倒れる

【第8留】イエス、エルサレムの婦人を慰める

【第9留】イエス、三度倒れる

【第10留】イエス、衣をはがされる
 第10留以降は「聖墳墓教会」の中にあります。
 イエスの時代、エルサレム城壁は現在と比べて南側に拡がっており、シオンの山やダビデの町を含んでいました。鶏鳴教会(けいめい教会:当時のカイアファの館)やシロアムの池も城壁内部にあったと考えられています。一方、ゴルゴタの丘や聖墳墓は城壁の外にありました。
 (参考)「それで、イエスもまた、御自分の血で民を聖なる者とするために、門の外で苦難に遭われたのです」(ヘブライ人への手紙13章12節)

【第11留】イエス、十字架につけられる

【第12留】イエス、十字架上息をひきとる 第11留と12留の間に小祭壇があり、嘆きながらイエスのご遺体を受けたマリア像(「悲しみの聖母マリア像」)が安置されています。

【第13留】イエス、十字架から降ろされる
 「塗油の石」
 アリマタヤ出身のヨセフ(ニコデモたちも)がピラトの許可を得てイエスのご遺体を十字架から降ろし、引き取って、この石の上で香料を添えて亜麻布で包んだとされています。一畳ほどの赤みがかった大理石に手を触れながら大勢の人が祈りを捧げていました。

【第14留】イエス、墓に葬られる
 「聖墳墓」
 塗油の石からわずか10数mの距離に、円形の建物に囲まれた中にイエスが葬られた墓があります。ここはアリマタヤのヨセフの私有地でした。「まだだれも葬られたことのない、岩に掘った墓の中に納めた」(ルカ福音書23章53節)と記されています。

 聖墳墓教会内にはいくつもの礼拝堂がありました。その1つで、塗油の石近くの聖堂でミサに与ることができました。
 ヴィア・ドロローサは思っていた以上に道幅が狭く、商店が軒を連ねる喧騒の中にありました。二千年前のあの日も、雑踏の中、人々の好奇の目を浴びながら、イエスは私たちの罪を背負って歩んでくださいました。
 私たちが、どのような時にも、共にいて苦しみを担ってくださる主に希望をおいて歩んでいくことができますように。 アーメン。

心のともしび運動 阿南孝也

*都合により4月は巡礼記をお休みさせていただきます。次回は5月に掲載予定です。