第五回「ゲッセマネの園」
「主の泣かれた教会」
オリーブ山の中腹に建つ教会です。建物のデザインは、イエスが流された「涙」を表しています。
エルサレムに近づき、都が見えたとき、イエスはその都のために泣いて、言われた。「・・お前とそこにいるお前の子らを地にたたきつけ、お前の中の石を残らず崩してしまうだろう。それは、神の訪れてくださる時をわきまえなかったからである」 (ルカ福音書19章41~44節)
エルサレムのために泣かれたイエスは、都が敵に包囲され、破壊されることを予告されました。そしてその予告の通り、エルサレムは紀元70年にローマ軍の攻撃を受けて陥落したのです。
「ゲッセマネの園」
エルサレム城壁東側のキドロンの谷をへだてたオリーブ山の麓にある園です。かつてこの一帯にはオリーブ畑が広がっていました。現在も、樹齢2千年を超える木が残っています。「ゲッセマネ」とは、ヘブライ語で「オリーブ油搾り」を指す言葉です。オリーブの木は乾燥にも強く、地中海沿岸の土地に多く見られる木です。
イエスの時代、夜はエルサレム城壁の門は閉じられ、城内に宿泊場がない者は城壁の外に出なければなりませんでした。夜、城外に出されたイエスは、弟子たちと一緒にオリーブ山に行くことが多かったようです。
「ギドロン谷の向こう。そこには園があり」(ヨハネ18章1節)。「いつものようにオリーブ山に行かれた」(ルカ22章39節)。イエスと弟子たちは、しばしばこの園に集まっていたことが分かります。
「ゲッセマネの教会(万国民の教会)」
イエスが聖木曜日の夜、苦しみもだえ、切に祈られたゲッセマネに建てられた教会です。4世紀に創建され、1919年に再建されました。16を超える国々(万国民)からの献金によって建てられました。
教会正面の美しいフレスコ画が特徴的な教会です。内部のビザンツ様式のモザイクは『苦悶のキリスト』、『ユダの接吻』、『イエスの逮捕』が描かれています。
祭壇の手前には、大きな岩盤が置かれています。この岩の場所で、イエスが血の滴るように汗を流しながら、「父よ、御心なら、この杯をわたしから取りのけてください。しかしわたしの願いではなく、御心のままに行ってください」(ルカ福音22章42節)と父なる神に祈りを捧げられたと伝えられています。
「ユダヤ人墓地」
オリーブ山の麓からキドロンの谷へ向かう一帯には、ユダヤ人墓地が広がっています。
ユダヤ教の教えによると、「終末の日にメシヤがオリーブ山に立ち、黄金の門が開いて、死者たちが復活する」と信じられています。復活の日に神殿に向かって立ち上がるために、死者は足をエルサレム神殿に向けて埋葬(土葬)されています。
心のともしび運動 阿南孝也