ベンチの3人の少年たち

Smile of the Sun - 太陽のほほえみイメージ

 ベンチに座って冗談を言い合っている3人は、ごく普通の少年たちだった。啓次はあまり気にもとめず、バスを待ちながら新聞を読んでいた。

 しかし、突然、荷物がないのに気が付いた。家を出る時、確かに持っていたのに見当たらない。

 彼はベンチのそばの小さい木の茂みを探し始めた。すぐに3人の少年も手伝ってくれた。「ラジオが入っている小さい包みなんだが・・・」と啓次は説明した。

 それから、その包みがなぜ大切なのかも話した。彼は病院を訪れた時、慰めたいと思う孤独なある婦人に出会った。それで、会社がひけてから、彼女にラジオを持って行くつもりだったのである。

 バスが角を曲がって来たのに、包みはまだ 見つからない。啓次は、行かなくてはならない。彼は、万一ラジオが見つかったら・・・と、名刺に患者の名前を書いて3人の少年に渡した。

 その夜、彼は病院に行かなかった。次の給料日まで別のは買えなかったからである。

  しかし、彼は給料日までに手紙を受け取った。患者の吉田夫人からである。ラジオを贈った彼の親切に対する心からの礼状であった。しかし、手紙には「なぜ、 3つも送ってくださったのですか。きっと他の患者さんを喜ばせるチャンスを与えてくださったのだと思いました。そこで自分の分を1つ残して、あとは隣の部屋の2人 の奥さんに差し上げました。お2人も私同様、心から感謝されています。」と書かれていた。

 なんと、ベンチにいた少年は、それぞれ同じ考えを持ち、3人とも啓次の名前で吉田夫人にラ ジオを送ったのだった。