バスが角を曲がって来たのに、包みはまだ 見つからない。啓次は、行かなくてはならない。彼は、万一ラジオが見つかったら・・・と、名刺に患者の名前を書いて3人の少年に渡した。
その夜、彼は病院に行かなかった。次の給料日まで別のは買えなかったからである。
しかし、彼は給料日までに手紙を受け取った。患者の吉田夫人からである。ラジオを贈った彼の親切に対する心からの礼状であった。しかし、手紙には「なぜ、 3つも送ってくださったのですか。きっと他の患者さんを喜ばせるチャンスを与えてくださったのだと思いました。そこで自分の分を1つ残して、あとは隣の部屋の2人 の奥さんに差し上げました。お2人も私同様、心から感謝されています。」と書かれていた。
なんと、ベンチにいた少年は、それぞれ同じ考えを持ち、3人とも啓次の名前で吉田夫人にラ ジオを送ったのだった。