よみがえった夜!

Smile of the Sun - 太陽のほほえみイメージ

 チャンピオン夫妻はアメリカでも有名なダンシング・チームである。非常な成功を収めたが、また、何回かの挫折にも耐えてきた。

 特に一つの試練となったのは映画製作であった。すべてがうまくゆかず、映画が失敗に終わるのは目に見えていた。チャンピオン夫人は全く気がめいり、映画を失敗に追いやったと思われるさまぎまな人々に失望し怒っていた。

 撮影が終わって2、3日後、夫人はロサンゼルスの有名なココナッツ・グローブの化粧室にいた。1週間にわたる公演の初日の舞台の夜であった。バーにつかまり練習しようとしたのだが、足が動かなかった。身体中が重苦しく、力もエネルギーも元気さえもなかった。

 そこで彼女は練習をやめ、頭をかかえこむようにして祈り始めた。「わたしたちの罪をおゆるしください。わたしたちも 人をゆるします。」と言ったその時、ゆるすということばの意味を考え始めた。すると次から次へと、彼女が冷たい感情を抱いている人々のことが思い出された。そしてみんなをゆるそうと思った。するとなんともいえない不思議な感情が身体中を包みこんでいくのを覚え、今まで重くのしかかっていた怒りが消えていったのである。

 あの夜のことは今でも彼女の記憶に新しい。「舞台で夫が私を高く抱き上げた時、私の全存在が高く舞い上がったんです。何もかもが驚くべき素晴らしい夜でした」と夫人は語っている。チャンピオン夫人が、生まれ変わった夜であった。