早朝飛行

Smile of the Sun - 太陽のほほえみイメージ

 朝、深い眠りから突然目覚まし時計でベルで、M氏は起こされました。朝の5時でした。ベルの音を急いで止めて「ああ、だれもこんなに早く起こされたりはしないのに」と思いながら2、3分横になっていましたが、ベッドから飛び起きました。M氏は民間航空機のパイロットで、今日は早出なのです。

 美しく晴れた日、銀色に輝いたジェット機は、まもなく7千メートルの上空に舞い上がり、素晴らしい風景を眼下に見下ろしながら南へと飛んで行きました。やがて飛行機はM氏の生まれ故郷の上空にさしかかりました。このコースを飛ぶ時は、いつも幼年時代に、眼下に見える湖で遊んだいろいろなことを考えるのです。

 「子供の頃は、あの湖に船を漕ぎ出し一日中魚つりをしていたものです。時々飛行機が湖の上を通ると、私は空を見上げながらパイロットになりたいなあと思っていました。しかし、今はこれと反対にあの湖に行って魚つりがしたくなりました。」と、M氏は副操縦士に話しかけました。

 このM氏の言っていることには、真実があります。また、人間の重要な性質の一つを表しています。なぜなら私たちには、いつも今やっていることより他のことをする方がより楽しく思えるからです。しかし、このことによってどれほど生きる喜びが失われているか分かりません。

 生きる喜びの真の秘密は、今やっていること、それがたとえ仕事であろうと遊びであろうと、それに打ち込んでそのことを楽しむことにあると思われます。