暑中お見舞い申し上げます。皆様いかがお過ごしでしょうか。
今月は、ご存知の方も大勢いらっしゃったでしょう、星野富弘さんについてのお話をお送りいたします。
詩画作家の星野富弘さんが、2024年4月28日帰天されました。78年のご生涯でした。
星野さんは、中学校の体育教師になったわずか2か月後、クラブ活動指導中に頸髄を損傷し、首から下の身体機能を失いました。9年間の入院生活の中でキリスト教に出合い、病床で洗礼を授かりました。星野さんは、すべてを神に委ねて、ご家族の支援のもと、口に筆をくわえる方法で感謝と喜びを描き始めました。生かされている喜びを草花の水彩画と詩によって表現する「詩画」と呼ばれる作品の展覧会が全国各地で開催され、大きな反響を呼びました。故郷の群馬県みどり市の「富弘美術館」は開館33年目を迎え、入館者は700万人を突破。作品展はこれまで全国各地約250カ所の他にも、ニューヨーク、サンフランシスコ、ワルシャワなど海外でも開催され、国境を超えて共感を呼んでいます。
~三浦綾子氏との対談『銀色のあしあと』(いのちのことば社)より~
三浦
「苦しみに会ったことは、私にとって幸せでした」(詩編119)と、いただいた色紙に書いてあって心打たれましたけれど、苦難をいいものとして受け入れたら、もうこれ以上のことはないですよね。星野
もちろん、そのときそのときの小さな苦しみや悩みはありますけど、でもそれがまとまって束になると、とてもいいことに変わっちゃうんです。
怒ったり悩んだりしながら、いつの間にか、神さまの、ゆっくり動くベルトコンベアーに乗せられて来たような、そういう感じがします。
~「たんぽぽ」 星野富弘 詩~
いつだったか きみたちが 空をとんでゆくのを見たよ
風に吹かれて ただひとつのものを持って 旅する姿が うれしくてならなかったよ
人間だって どうしても 必要なものは ただひとつ
私も 余分なものを 捨てれば 空がとべるような 気がしたよ
~*星野さんを支え続けてくれた母への言葉~
「神様が たった一度だけ この腕を動かして下さるとしたら 母の肩をたたかせてもらおう 風に揺れるぺんぺん草の 実を見ていたら そんな日が本当に 来るような気がした」
~*口述筆記(絵と詩以外のすべての文章)で支えてくれた妻への言葉~
「ふたりが見つめあって生活していくのには、あまりにも、たいへんなことが多すぎます。でも、ふたりが聖書という、同じものを目標に歩んでいくのなら、悲しみや苦しみのなかにも、神さまの愛を見つけることができるのです」
魂がふるえる言葉のひとつひとつです。
きっと多くの方々の心に響いたことでしょう。かくいう私も、その一人です。
その生涯を神に委ね、喜びと感謝のうちに祈りを「いのちの言葉」に昇華させて生きた星野富弘さんに倣って、私たちも歩んでいきたいと思います。
心のともしび運動 阿南孝也