アメイジング・グレース

毎月のお便りイメージ

 新緑の季節、生命の息吹を感じる頃となりました。
  いつも心のともしびホームページをご視聴いただきありがとうございます。
  今月は有名な讃美歌にまつわるお話をお届けします。

 

 Amazing grace how sweet the sound.
 That saved a wretch like me.
 I once was lost but now am found.
 Was blind but now I see.

 

 驚くべき神の恵み 何と美しい響きだろう。
 私のような悲惨な者までも救ってくださった。
 道を踏み外しさまよっていた私を 神は救ってくださり  かつては見えていなかった神の恵みを 今は見ることができる。

 

「アメイジング・グレース」は世界中で愛され、歌い継がれている讃美歌です。
 英国国教会の牧師であったジョン・ニュートン(1725~1807)が作詞したものです。
 この詩は、彼自身の劇的な回心の経験を綴ったものであることをご存じでしょうか?

 ニュートンが活躍した当時、英国では、上流階級の間で紅茶をたしなむ習慣が流行していました。
 貴重な紅茶を確保するために、大勢の人々が奴隷としてお茶の生産地であるアジア地域に連行され、過酷な労働に従事させられる状況が続いていました。
  貿易船船長の息子としてロンドンで生まれたニュートンは、11歳で父と共に船に乗り奴隷貿易に携わるようになりました。

 ところが、ニュートンが22歳の時に転機が訪れます。航海中に激しい嵐に襲われたのです。転覆の危機の中で、ニュートンは神の助けを求めて必死に祈りました。奇跡的に船は転覆を免れ、この経験がニュートンの回心へとつながったのです。ニュートンは罪を悔い改め、船を降りる決断をします。過去の生き方と決別し、神学を学んで牧師としての人生を歩むことになりました。

 さらにニュートンは、奴隷貿易に反対を表明した政治家ウィリアム・ウィルバーフォースと力を合わせて奴隷貿易廃止運動を進め、1807年英国は奴隷貿易禁止を実現させることに成功したのです。リンカーンによる米国での奴隷解放宣言の半世紀以上前の出来事でした。ニュートンは同年12月に、82歳で地上での生涯を終えました。

 晩年ニュートンは失明に苦しみましたが、「アメイジング・グレイス」で謳われているように、彼の心の目は開かれ、はっきりと見えるようになっていたのです。

 「私はかつての自分ではありません。神の恵みによって今の自分があるのです」「多くの危険、労苦、わなを通って、私はここまで来ました。ここまで私を安全に導いてくださったのは恵みです。そしてこの恵みは、私を天のわが家まで導いてくださるでしょう」(ジョン・ニュートン)

心のともしび運動 阿南孝也