アリマタヤのヨセフの決断

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 アリマタヤのヨセフをご存じでしょうか? 彼の名は、イエスの埋葬に深く関わった人物として、四福音書すべてに登場します。
 サンヘドリン(最高法院)の身分の高い議員(マルコ福音15章43節)であったアリマタヤのヨセフは「同僚の決議や行動には同意しなかった。...神の国を待ち望んでいたのである」(ルカ福音書23章51節)と記されています。しかし、「イエスの弟子でありながら、ユダヤ人たちを恐れて、そのことを隠していた」(ヨハネ福音書19章38節)のですから、積極的に反対したというよりも、賛成に手を挙げなかっただけなのかもしれません。

 そのようなヨセフでしたが、使徒たちが怖くなって逃げ去った後も、処刑の場に留まったのです。イエスが亡くなったのは金曜日午後3時ごろであったと聖書は伝えています。ユダヤの一日は、日没と共に終わります。翌日は安息日(ヘブライ語:シャバッド)なので、イエスのご遺体を十字架から降ろすことができなくなります。この僅か3時間ほどの間に、ヨセフは彼の人生を変える大きな決断をしたのです。

 夕方になると、アリマタヤ出身の金持ちでヨセフという人が来た。この人もイエスの弟子であった。この人がピラトのところに行って、イエスの遺体を渡してくれるようにと願い出た。そこでピラトは、渡すようにと命じた。ヨセフはイエスの遺体を受け取ると、きれいな亜麻布に包み、岩に掘った自分の新しい墓の中に納め、墓の入り口には大きな石を転がしておいて立ち去った。(マタイ福音書27章57~60節)

 イエスの弟子であることを公言することによって、地位も身分も財産も失い、迫害されるかもしれません。このヨセフの勇気ある行動によって、ヨセフの用意していた墓が、イエス復活の舞台として用いられることになったのです。

 ある日突然、人生を左右する大きな決断を迫られる場面に直面するかもしれません。そのようなとき、いつも共にいてくださる主が、きっと背中を押してくださると信じています。そのときは、神に身を委ねて、そっと足を前に出そうと思っています。

心のともしび運動 阿南孝也