生前ハヤット神父が書いたお話「太陽のほほえみ」(英語と日本語)を、
2015年5月掲載分から2021年3月掲載分まで保存しています。どうぞご覧ください。

ハヤット神父
ハヤット神父

 

生きる喜び

Smile of the Sun - 太陽のほほえみイメージ

 朝、深い眠りから突然目ざまし時計で5時に起こされたM氏は、ベルの音を急いで止めて「ああ、また起きなければならないのか、だれもこんなに早く起こされたりしないのに」と思いながら、2,3分横になっていました。そして、ベッドから飛び起きました。M氏は民間航空機のパイロットで今日は早出の番なのです。

 雲一つない空に太陽がさんさんと照り輝き始めました。銀色に輝いた尊厳なジェット機は、まもなく7,000メートルの上空に舞い上がり、すばらしい風景を眼下に見おろしながら南へと飛んで行きました。

 やがて飛行機はM氏の生まれ故郷の上空にさしかかりました。このコースを飛ぶときはいつも自分の幼少時代を思い浮かべ、太陽に輝いて浮かぶ眼下の湖で遊んだいろいろなことを考えるのです。

 「子供のころは、あの湖に舟をこぎ出し、1日じゅう魚つりをしていたものです。時々飛行機が湖の上を通ると、私は空を見上げながらパイロットになりたいなあと思っていました。しかし今はこれと反対に、あの湖に行って魚つりがしたくなりました」M氏は副操縦士にこう話しかけました。

 このM氏の言っていることにはユーモアがあります。また人間の非常に重要な性質の一つを表わしてもいます。なぜなら私たちにはいつも、今やっていることより他のことをする方がより楽しく思えるからです。他人の花が赤く見えるからです。そしてこの性質のためにどれほど生きる喜びが失われたのかわかりません。

 生きる喜びの真の秘密というのは、今やっていること、それがたとえ仕事であろうと遊びであろうと、それに打ち込んでそのことを楽しむことにあると思われます。

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