曾祖母は「ご隠居様」と呼ばれて、南向きの離れで、静かに暮らしていた。特に何をしてもらったという記憶はないが、幼い私が訪ねて行くと、大げさに驚いたふりをして迎え...
曾祖母は「ご隠居様」と呼ばれて、南向きの離れで、静かに暮らしていた。特に何をしてもらったという記憶はないが、幼い私が訪ねて行くと、大げさに驚いたふりをして迎え...
毎年、9月の第3月曜日が敬老の日。年長者を敬うのは、人間の美しい業の一つではないだろうか。年長者が大切にされている社会こそが、本当に成熟し、豊かであるのだと思...
小さな枕を見た。友人の家を訪ねた時のこと。幼稚園に通うようになった娘さんのベッドに、ふっくらと可愛い枕が置かれていたのである。聞けば、この枕は友人の手作り。小...
少年文学には様々な父親と息子が描かれていて、どの親子も印象深い。重松清の短編「きよしこ」にも、心に残る父と子がさりげなく描かれている。 6歳のきよしはカ行と...
コーヒーが大好きで、淹れ方にも凝っている男性がいる。或る日、友人たちを招き、夕食後にご自慢のコーヒーを淹れて皆で楽しんだ。彼がすっかり満足して、「僕はコーヒー...
「部下が心を開いてくれない」という上司の悩みを読み、職場の人間関係の苦労に感じ入ったことがあった。毎日の厳しい業務をこなしながら、心まで開かねばならないとは、...
或る有名な服飾デザイナーの話である。彼女は華やかに活躍しているように見えていたが、自身では行き詰まりを感じ、仕事を辞めたくなっていた。気がつけば、人のために服...
気がつかないようでも、人は様々なものに支えられて日々を生きているのだと思う。人には心という厄介なものがあって、助けなしには、とても一人では持ち運べないのである...
「1歩でも前に進むよう、常に努力していなさい」と言われると、大変な重荷を背負わされたように感じてしまう。常に頑張り続けるなんてつらい、楽をしたり、休んだりした...
幼い子どもには、恐いと感じるものが沢山ある。私も幼い頃は恐がりで、守護の天使が一人一人についていてくれるのだと聞かされて、安心はしたものの、不安や恐怖は完全に...