ある日の午後、父は谷川に投網をもって魚を捕りに行った。夕方、玄関にたどり着いた父はびしょぬれで、滴がポタポタとたれていた。「九死に一生を得た」という父は呆然と立...
ある日の午後、父は谷川に投網をもって魚を捕りに行った。夕方、玄関にたどり着いた父はびしょぬれで、滴がポタポタとたれていた。「九死に一生を得た」という父は呆然と立...
小学1年生の時、友だちと「北山原」という殉教地に行った。今は周囲に沢山の住宅が建っているが、当時は原っぱだった。「北山原」の中央に十字架があった。十字架には両手...
弟が5歳になったころだった。父はお祭りの出店で弟に5羽のヒヨコを買い与えた。お祭りで買ったヒヨコは育たないものだが、弟が慕っている近所の男の子がヒヨコの育て方を...
母はがんを告知された8年前から、葬儀の場所、方法、着物、手紙などを入れて行李に準備していた。幸いにも2年で治り、その後5年半は祈りの生活をしていた。母の死までの...
東北の雪国ではクリスマスというと、キリスト教徒ではなくとも辛く長い冬を耐えぬく前の、光に満ちたお祭りとして人びとは楽しみにしていたように思う。私の家族もキリスト...
ストレス解消法は私にとってそれほど困難なことではない。逃げ出したいと思うような苦しいことがあっても、「マタイの福音書」5章3節から12節にあるイエスの「山上の説...
飛行機に乗る度に感動する瞬間がある。飛行機に搭乗を終えると、アナウンスがあり動きだす。滑走路に向かって旋回していく。滑走路をゆっくり進むと一時停止する。この停止...
私の祖母は12歳の時に母親が亡くなり、4人の兄弟が残された。父親は12歳の祖母を親類に預けた。それから20歳になるまで、親類を転々とした祖母は、人の心の様々な面...
私の人生の途上で出会った宝物の人物のひとりに地球科学者の猿橋勝子先生がいる。猿橋先生は女性科学者を育てる「猿橋賞」を創設され、世界の10人の優れた女性科学者にも...
「妙子の信仰はうるさい」と入院している父に言われた。私は父の傍らで、ヴェールをかぶり、電光石火のごとく十字を切り、黙々とロザリオを唱えた。物見高い見舞い客には弱...