伯父は「タケちゃんのうちの子供たちは、なぜ次々に洗礼を受けるのか?」と聞いていた。父はあっさりと伯父に、「父親が今ひとつだから、うちの子供たちは、天のおん父と取り替えたのだと思う」と笑いながら答えていた。
父は少し変わったところがあった。私が小学校のとき、父がオートバイに乗って迎えに来たことがあった。サングラスに半ズボン、指輪もしていて、私は同級生に「あなたのお父さんはギャングか?」と聞かれ、恥ずかしくて逃げるように家に帰ってきたこともある。
その父も洗礼を受けて亡くなった。父が亡くなるおよそ1カ月前は、私のほうが具合が悪く、父の車で病院に送り迎えをしてもらっていた。
父は運転しながら私に言った。「自分の夢を実現できなくてもよいのではないか。次の世代、もっと次の世代が夢を実現してくれれば」と言った。私の夢は叶わなかったけれど、神さまは長い闇の果てに、小さな鉛筆をくださった。書くこと。
父は私の夢は叶わないことを知っていたのだ。
今思うと、父のほうが早くから天のおん父と交流があり、「子育ての実り」の秘訣を教えてもらっていたのかも知れない。