父のアドバイスによって、その選手はその気になって、スパイクを履いている選手を見ても動揺せず、始めから飛ばした。ほかの選手に囲まれたりしないようにして走り続け、なんと優勝してしまったのだ。父はスパイクを忘れたと聞いた時にゾッとしたそうだ。まさか父の言った通りに走ることができるとは思ってもいなかったし、まして優勝するとも思っていなかった。
もし、父が「スパイクを忘れるなんて、バカヤロウ!」などと選手を怒鳴ったりしたら、試合に出ても、「どうせ負ける」と思って惨憺たる結果に終わっていただろう。私は父のこのエピソードを聞いてから、人は、どんな状況でも、初めから諦めてはいけないということを教えてもらった。