正月を迎える前には、どんなに家計が苦しい時でも、何かひとつは新しいものを買ってくれた。または作ってくれた。
靴下や手袋、マフラー、そんな小物だけの年もあったが、それでも、新しい物を身につけることで、心あらたになるのであった。
そんな私も70歳を迎えた。
2年半前には大腸ガンの手術をした。
夜に手術は終わったのであったが、翌朝、早速に、リハビリの先生が来られて、歩く練習をしますかときかれた。
その時、私は傷口は痛かったけれど、始めが肝心だと自分を励まし、痛みをこらえつつ1歩1歩ゆっくり歩いた。あと、毎日、歩いた。
それがよかったのか、私は回復が早いとほめられた。
大阪には「後でする喧嘩は先にせえ」という言葉があり、夫の両親はよく口にしていた。喧嘩という大げさなものではなく、イヤなことは先のばしせずに、始めにした方がのちのち楽であるという意味で使っていた。
「終わり良ければすべて善し」という言葉があるが、「始め善ければすべて善し」と、今日からいいかえて実行しようと思う。
今日、この一瞬が私が始めて迎える時間なのだから・・・。
私の「おっちょこちょい」問題は、具体的には忘れ物やケアレスミスです。まず、これは根性や気合といった精神力だけでは克服できないことを自覚しました。実際に結果を出すには、忘れたり間違えたりしないように「ただがんばる」のでなく、チェック機能を充実させようと思いました。
そこで、鞄のものを出し入れする順番やデスクでの行動を細かく思い出し、一つひとつについてヒューマンエラーと呼ばれる「避けられない間違い」が発生する可能性と原因を考えました。家の鍵はどこから出すか、急いで取り出したい調味料は何か、翻訳やエッセイで文章を書いているときはどこで間違えることが多いかなどなど。分析に応じてものの配置を変え、確認方法を何通りも用意したのです。特に、失敗したとき「何が起きたか」を勇気を出して思い出すようになりました。
すると、進むべき方向がよりクリアに見えてきて、目標の立て方が変わりました。理想を描く形から、自然に実践できる方法を探す形になったのです。
1年の始めを良くするには、ずっと先のゴールを描くとともに、いまこの瞬間から踏み出す方向をはっきり見据えることが大切なのかもしれません。