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ぬくもり

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

どんなに言葉を連ねても、言葉だけでは伝えきれないものがあるように思う。それは、人間のぬくもりだ。

言葉には相手を納得させ、感動させ、大きな気づきを与えて人生を変える力さえある。だが、どんなに美しい言葉を連ねても、人間のぬくもりだけは伝え尽くすことができない。

手紙をもらったときに、ワープロの文字だけしかなければ、ぬくもりはまったく感じられないだろう。たとえわずかであっても手書きの文字が書き添えられているとき、文字のクセやインクの滲みなどから、相手のぬくもりを感じることができる。書きながら落とした涙で文字が滲んでいるならば、ぬくもりはますます強くなる。人間のぬくもりを伝えるのは、言葉以外の何かなのだ。

一番よいのは、実際に会って、直接に話すことだろう。声や表情、身振り、そして存在そのものが、ぬくもりを確かに伝えてくれる。

神がイエス・キリストとなってこの世界にやって来たのも、きっとそのためだと思う。天使の言葉や夢の中のお告げだけでは、どうしてもぬくもりを伝え尽くすことができない。そこで、神は人間となってこの世界にやって来られた。イエスの声や表情、身振り、その額に浮かんだ汗や、頬を伝わり落ちる涙が、わたしたちに神のぬくもりを伝えてくれる。神が人間にならなければ、わたしたちはいつまでも神の愛を知ることができなかったに違いない。

神の言葉は、わたしたち人間の心に宿って愛となる。心に愛がやどっているなら、わたしたちの全身が神からの愛のメッセージだ。難しいことを考えなくても、声や表情、ちょっとした仕草など、あらゆることがぬくもりのメッセージとなる。

神の愛を受け止め、心に愛を宿すことからすべてを始めたい。