日本の古い木造建築でしたから、すきま風が入り込む寒い家です。関西地方でしたから、夜中じゅう暖房をつける習慣もありません。ふと見ると、カーライさんのために、布団が敷かれています。子どもの目から見ても、寒そうな毛布が敷かれています。
私は思いました。遠い国から日本に来て、寒い我が家に泊まってくれるカーライさんに、寒そうな毛布ではとてもかわいそうだ。そうだ、私の自慢のぬくもり毛布で寝てもらおう、と。
そこで私は、自慢の毛布をカーライさんに使ってもらい、代わりに私は彼のための少々寒い寝床に入って寝たのです。
翌朝、両親から、「お前はお客さんの寝床に入って寝てしまっていたな」と笑われましたが、私にとっては、「ぬくもり」をお客さんに分かちあった思いでした。ハンガリーからのお客さんは、ニコニコしながら帰って行きました。
「ぬくもり」を独り占めすることは簡単ですし、ごく普通のことかもしれません。でも、この「ぬくもり」を、もし、誰かと分かち合えれば、もっと多くの「ぬくもり」に包まれることをこの時、私は学んだような気がします。