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忘れられない人

熊本 洋

今日の心の糧イメージ

 人生95歳にもなると、あまりにも多くの人との出会いがあり、「忘れられない人」を思い出すのも一苦労です。家族、親戚、友人、それに、教師、先輩、後輩、同僚、見知らぬ人など、さまざまな人と出会い、いろいろお世話になってきました。「忘れられない人」と思っていた人たちも、最近、歳と共に、忘れはじめているように感じます。
 ですが、確実に言えることは、今ある自分は、この大切な人々との関わりから得た学びにより存在するのだということであります。

 ドイツの詩人で、作家のゲーテは「人と人との出会いは、すべて意味がある」と言っているように、忘れられる人も、忘れられない人のように、私の心の成長、考え方、そして人間としての在り方に影響を及ぼしています。人との繋がりとは不思議なもので、忘れている人が自分を力付けてくれていたり、自分自身を見つめ直す機会を与えてくれたりするように思います。このお陰で、自分自身を成長させることができました。

 多分このような人は、自分があまり思い出したくない経験の持ち主であったりして、記憶から消してしまっているのかもしれませんが、そのような人たちこそ、忘れてはいけない人であるに違いありません。

 今生きている人とか、すでに天国に召された人とかは関係なく、「忘れられない人」とは、ただ記憶に残る人ではなく、自分の一部となった人のことではないかと思います。たとえ記憶の中から姿を消してしまっていても、その人から受け取った言葉、想い、気持ち、それに教えなどは、今の私の生き方や考え方に静かに息づいています。

 これから出会う人も、記憶に残らなくても、心の中にいつまでも残っていくと思います。