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忘れられない人

湯川 千恵子

今日の心の糧イメージ

 幼友達のせっちゃんが癌で亡くなった。

 子どもの頃はままごと遊び、高校時代は音楽部でピアノを弾いたり、歌ってばかり。大人になっても会えばすぐに二重唱が始まった。せっちゃんは故郷の街で保育園の園長となり、定年後は好きな絵を描いていた。

 クリスチャンではなかったが、野に咲く花の美しさに惹かれて描いていると、何かが見えてくる。その何かを見極めたくて、心震えるものを描き続けていると言っていた。

 そんな彼女だから、自然の美しさの中に満ち溢れる神様の愛を讃えて歌う讃美歌が、心に沁みたのだろう。展覧会を見に来た時、私がいつも歌っている讃美歌をたくさん覚えて帰り、園児たちにも教えて「先生、神様の歌を歌おう!」と無邪気にせがまれる...と笑っていた。お気に入りは【神様の愛は染みとおる、私たちの心に陽の光のように】という讃美歌だった。

 「心のともしび・ラジオ」に「友達」というお題を頂いた時、せっちゃんの事を書いた。その放送を聴いた彼女は、それ以来、毎朝聞くようになり、時々感想の電話をくれていた。

 同窓会で帰省した折、彼女の癌を知ったが意外に元気で安心していた。ところが一ヶ月後、天に召された。

 亡くなる五日前「ちいちゃん、あの歌うたって...」と電話してきた。私はもう涙ながらに、彼女も弱々しい声で「神様の愛は沁みとおる...」と一緒に歌った。

 癌の告知を受けても淡々と明るいせっちゃんだった。歌を歌いながら街はずれを歩いていた様だ。祭壇の写真も微笑んでいた。

 「心のともしび・ラジオ」を長年聴く内に、神様の愛が彼女の心に沁みとおり、神様の慈しみのみ手に抱かれて今は安らかな彼女を想う度に、私はただもう感動と感謝で一杯になるのである。