

その先生にお会いしたのは、上智大学に合格し、入学に向けた打ち合わせに伺ったときでした。私はフランス文学科の学生としても、日本で初めての点字受験者だったため、教材の点訳や学内での生活について細かく検討する必要があったのです。
先生はフランス出身のフロモン神父様。日本に帰化し、フロモンという名に、父母の父、道路の路、登竜門の門、の漢字を選ばれました。
文字通り、御父(神)への路の門。先生にぴったりだと思いました。
私の受験希望を知ったフロモン先生は「フランス文学を学びたい子がいるのなら受け入れるべきです」と強く働きかけてくださり、点字受験が実現したのだそうです。入学すると、率先して私に声をかけ、関わってくださいました。そして他の先生方も同じく、温かく受け入れてくださったのでした。
先生のお住まい、イエズス会の施設が実家に近かったため、私の帰る時間を見計らって「よく会いますね、一緒に帰りましょう」と声をかけてくださいました。わざわざ待っていた素振りは見せず、さりげなく。学年が進むと、帰り道の会話はフランス語になり、楽しいレッスンとなりました。
片足が不自由な先生は杖を使って歩かれていましたが、私の手をしっかり引いて誘導されます。その気概とエネルギーに、元気をいただくばかりでした。
先生の追悼ミサは、大学に隣接する聖イグナチオ教会で行われました。その前夜、先生が親元を離れた私の部屋に来られた夢を見ました。杖を持たず軽やかに歩かれていて「天国では杖は要らないんですね」と申し上げたことを覚えています。
先生は、いまも私の心の中で、日々「がんばらなければなりません」と声をかけてくださっています。私にとって、魂の恩師です。