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忘れられない人

中井 俊已

今日の心の糧イメージ

 忘れられない人の筆頭は、聖ヨハネ・パウロ二世教皇です。

 1980年4月の聖週間、世界中から集まった学生数千人とバチカン内で謁見がありました。大学生だった私は日本から参加した20名ほどのグループの一人でした。

 会場は、最初から若者の熱気と歓喜の声でいっぱいでした。

 「教皇万歳」というような意味の言葉を誰かが叫ぶと、その度に会場全体が呼応し、拍手が鳴り響きました。しかし、教皇が一旦語り始めると誰もが全身を耳にするように、聞き入っていました。人種も国籍も言語も異なる若者たちなのに、心が一つになっていることに驚きました。

 さらに、その10ヶ月後、1981年2月、歴代教皇として初めて日本を訪問されたときのことも忘れられません。4日間の訪日期間は、東京、広島、長崎での多彩な行事がぎっしり詰まり、超過密スケジュールでした。しかし、教皇は疲れを見せることなく、どこでも人々の温かな歓迎に始終にこやかに、手を振って応えられていたのです。信者は親しみを込めて、「パパさま」と呼んでいました。

 私が住んでいた長崎は、その冬一番の寒波に襲われ、日中の最低気温がマイナス3度。しかし、野外ミサには47,000人参加しました。

 横殴りの吹雪の中、2ヶ月半ほぼ毎日寝食の時間を削って準備されてきた日本語で、2時間以上のミサの務めを果たされる教皇。常に愛のために自分を捧げた生きるキリストの姿を目にするようでした。

 私の体は寒さで震えながらも、心は熱く燃え、頬に流れる涙を抑えられませんでした。

 ミサの中で、私は生涯忘れてはいけない決心をしたのです。

 この先どんな苦難があっても、この人のように、神様のために生きる道を歩んでいこうと。