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忘れられない人

末盛 千枝子

今日の心の糧イメージ

 以前、東京青山のマンションに遠藤周作さんや井上洋二(ようじ)神父様、それに音楽評論家の遠山一行(かずゆき)さんとピアニストの慶子(けいこ)夫人など、そうそうたるメンバーが集って「キリスト教芸術センター」というサロンが開かれていました。
 毎月、いろんなゲストの方をお招きして話していただき、その後で談笑するのです。山田洋次監督がお見えくださったこともありました。幸いなことに私もその仲間に入れていただきました。

 その中には毎回奥様とご一緒においでになる小柴昌俊(こしばまさとし)先生がおられ、いつも楽しく、おかしなことばかりおっしゃるのです。でも、遠藤さんの秘書の方が「あの方はノーベル賞に一番近くにおられる方なそうよ」と言われたので、仰天しましたが、事実でした。

 ある時、遠藤さんが小柴先生に「宇宙を学ばれて、何がわかりましたか?」と聞かれたのです。すると先生は即座に、「宇宙には秩序があるということがわかりました」とおっしゃいました。

 またある時、先生が唐突に「プロテスタントと違って、カトリックでは、マリア様を大切にするのは何故かね?」と聞かれたのです。遠藤さんも、井上神父もおられるのに、誰も何も言わないのです。
 私は耐え難くなって、「私は個人的にこう思っているのです。マリア様はお告げの時から、理解できないような困難なことを天使を通じて次から次へと神様に命じられ、それを一つ一つ、黙って胸に納めて思いめぐらしておられたというところに、カトリック教会は信仰の原点のようなものを見てきたのではないでしょうか。」と言ったのです。
 すると先生は、本当に嬉しそうに「気に入った、あんたのその考え、気に入ったよ。」と言ってくださったのです。忘れられません。