

「旅路と言えば、出発点を出て、出発点に戻るのが普通です。なかにはあてどもなく、さまよい続ける旅もあるかもしれませんが、それは「放浪」とか「流浪」と呼ばれるものです。
人生の旅路となれば、だれ独り同じ路を歩むことなく、人それぞれ、自分の路を切り開いていきます。一歩一歩大切に、慎重にしっかり踏みしめて、前に進まなければなりません。万一つまずいたり、転んだりしても、立ち上がる元気と勇気、つまり「勇往邁進の気概」を常に持ち合わせていなくてはならないと思います。
このように人生の旅路はそれぞれ異なりますが、共通して言えることは、私たちはだれしも『死』という終着地に向かっているということです。これを悲観的に捉えるのではなく、逆に終わりがあるからこそ、この「今」の瞬間を掛け替えのない貴重な時として捉えることが大切です。
英語で、「今、現在」を "present" と言いますが、言葉の意味通り、「この一瞬」は神からのプレゼント・贈り物でもあります。無邪気な子どもたちを観ていると、何にも囚われず自由に今を生きています。やっていることに失敗しても、子どもたちは、自ずとやり直し、人の目を気にせず何度も繰り返し頑張っています。
この健気な頑張りこそ、人生に欠かせない貴重なコツであり、「力」だと思います。だれしも人生の旅路の中で、自分がどこに向かって進んでいくのか、そもそも進むべきなのかなど、悩むことがあるに違いありません。しかし、ここでことさら人生の意味を問うのではなく、自分に何が求められているのかを探求することこそ、旅路にはなにより欠かせないことであるのを信じて疑わないところであります。