

あるところに信仰深いおばあさんが住んでいました。そのおばあさんはいつも神さまへ信頼をこめて祈っていました。ある日、大雨による洪水が起こり、おばあさんの家にも水が上がってきたので、おばあさんは屋根の上に避難しながら「神さま、どうか助けに来てください」とひたすら祈り続けていました。
そこへ、救援隊が助けに来て「おばあさん、安心してください。我々に掴まって!」と手を差し伸べたその時、おばあさんは言いました。
「わたしが待っているのは神さまです。神さまがきっとわたしを助けに来てくれますから」と答えたそうです。
これは示唆に富む話だと思います。わたしたちが叫び求める声は神さまに届いていて、神さまはそれに応えて恵みを送ってくださっている。この話では、救援隊の中に神さまがおられたのですね。でもわたしたち人間は時折、人の中におられる神さまに気づかずに過ごしてしまいます。
この悲しい行き違いはどれほど長い年月続いてきたでしょうか。わたしたち人間との親しい交わりに渇く神さまは、旧約時代に何人もの預言者を送って回心を呼びかけられました。
しかし人間はその預言者たちの言葉に耳を傾けませんでした。それでもわたしたちの愛に渇く神さまは、ついに人間との間にある大きな淵にイエス・キリストという橋をかけてくださいました。
クリスマスは神さまと人間の両方が待ち望んだことを目の当たりにする日と言えるのではないでしょうか。人間が長い歴史のなかで待ち望み続けた救い主が現われ、また神さまも「待ち望んできた」人間との新しい愛の交わりが実現した瞬間だと思います。
この美しい瞬間は貧しい羊飼いたちの瞳にしっかりと焼きついたことでしょう。