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祈り合う

服部 剛

今日の心の糧イメージ

 ダウン症をもつ息子の(しゅう)は、幼い頃は体が弱く入院を繰り返していました。現在は特別支援学校に通い14歳ですが、特別支援学校の小学部に入学後の7年間を健康に過ごしてきました。ただ、親として悩んでいたことは、息子はなかなか汗をかけない体質であるにもかかわらず、水分を摂らせようとすると嫌がり、なかなか飲んでくれないことでした。

 ある日の夕方、家に帰ってきた周はぐったりと寝そべり、腕にふれるととても熱く、体温は39度以上の高熱でした。妻が近所の小児科に連れていくと、先生は緊張感のある声で「これは大きな病院で受診した方がいい。紹介状を書きます」と診断しました。私と妻は急きょ、大きな子供病院へ車で連れていきました。

 夜間の付き添いは一人迄だったため、検査には妻が付き添い、私は不安な気持を鎮めようと、2時間以上、病院の敷地内を歩き回らずにはいられませんでした。

 心の中で祈っていると、私達家族を洗礼へと導いて下さった文学研究者のM先生や子供の頃から周をかわいがって下さったシスターの方々を思い出しました。携帯電話のメールで息子が検査中であることを伝えると、それぞれの方から「息子さんのことを祈っています」という返信がきました。私たちは大事な局面でM先生とシスターの方々の助言や祈りに支えられてきたので、皆様の祈りに(すが)る思いだったのです。

 外で待ち続けた私と、懸命に検査に付き添った妻と、連絡した皆様の祈りは届き、重い熱中症という診断だった周は自宅療養で徐々に回復し、水分摂取の方法をよく話し合い、再び通学できるようになりました。

 皆様の祈りに感謝して、これからも互いに祈り合いながら、この日々を歩んでゆきます。