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祈り合う

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

 手紙の返事に、「あなたとご家庭のために祈っています」と書くことがあります。すると、次に来た手紙には、必ずと言っていいほど「お祈りありがとうございました」とあるのです。

 息子さんが就職したけれど、うまくいかずに悩んでいるお母さんから「祈っていただいて助かります」という感謝が。ガンで闘病している人からは「一人ではないと、感じています」。以前私が結婚式を司式したカップルからは「お祈り頂き、元気で結婚生活20年経ちました」と。このように、祈りによって寄り添えるのだなと改めて感じます。
 また、ある人から、病気見舞いに度々訪ねていた知人が突然亡くなり、その人の葬儀と、友人達で以前から計画していた旅行の日とが重なってしまい、両方大切なので・・と悩みつつ相談をされたことがあります。

 私は心で寄り添うことに重きを置き、「旅行に行ってらっしゃい。楽しく過ごして、亡くなった方には、『あなたの分まで楽しんできましたよ』と伝え、その方の安息を祈りましょう」と答えたのでした。私に背中を押されて旅行に出かけたその方は、後日「亡くなった人のことをいつまでも心に留めています」と私に語ってくださいました。

 このことを思い出しながら、東日本の震災直後のことを考えました。震災の直後「絆」という言葉が頻繁に使われ、その年は結婚する人も多かったと聞きます。しかし、東京オリンピック決定で世間が沸いた時、「これで人々から忘れられていく」と被災者の方が嘆く姿に接し、人と人とが関わっていることの大切さを感じました。

 マザーテレサが、「愛の反対は、憎しみではなく、無関心です」と語っているように、心を込めて寄り添う祈りは、愛することの一つの表現であると感じるのです。