

わたしには30年来、心に抱いてきた望みがありました。それはグレゴリオ聖歌を現代の日本の人々にも親しんでいただくということです。一昨年にようやくアルバムを制作し、配信をスタートできました。さらにわたしは「O filii et filiae」という聖歌を映像にのせてラテン語と日本語で発表したいという望みがありました。それは「自分の望み」というより、何か神さまから託された使命のように感じていました。
この歌はキリストの復活から昇天までの出来事を聖書の記述に沿って歌われているので、わたしはいつも復活節には心のなかで歌っています。こんなに素朴で素敵な歌をもっと知ってもらいたいという望みが、ついにこの春、実現したのです。
まるでこの歌の背景として用意されていたかのような秋吉台のカルスト台地。岩や枯れた草と青草が混じる風景。そして見事な晴天にも恵まれ、素晴らしい動画を撮っていただくことができました。
これらの恵みは一つとしてわたしの努力でいただけたものではなく、神さまが天から段取りしてくださったのです。すべてが奇跡のようでした。
実は後日知ったことなのですが、動画を撮影していた時には、すでにわたしにとって大切なある恩人が帰天されていたのです。その知らせを受けた時、気づいたのです。この企画のためにきっとその方が天から祈っていてくださったに違いないと!
祈りは時空を超えるものです。たとえ会えなくても、姿が見えなくなっても、相手の幸せを願い、神さまに善を祈り求めることは、大きな恵みとなるということを体験させていただきました。天に帰られた人も地上にいる人も交わることができる〝祈りあい〟の心を、いつも忘れないようにしたいと思います。