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教皇フランシスコの『識別』

崔 友本枝

今日の心の糧イメージ

 教皇フランシスコさまが来日されたとき、私は、家族に、自分の都合で学校の授業をつぶしてはいけない、と反対されてミサに行くことができませんでした。

 ところが、授業に出ると生徒はぽかんとして「先生はどうして教皇さまに会いに行かないの?」と聞くのです。残念で泣きたくなりました。もし、行っていたら、彼のお人柄やミサの話を伝えられたでしょう。この私の体験は、識別(しきべつ)を誤った例です。私には神さまとの対話が足りませんでした。

 「識別」とは、神さまが、私に何を望んでいるかを祈りと心の動きから判別することです。それは、自分の望みよりも神さまのお望みを優先し、行動を選択したい、という態度です。

 教皇さまの講話集は何冊も出版されていますが、『識別』という本から一部を引用します。

 「識別は、すべての人にかかわる大事な行為です。 (中略) よい決断、正しい判断は必ずあなたを最終的な喜びへと導きます」。

 また、同じ本の中で聖書を引用しています。「(その)のすべての木から取って食べなさい。ただし、善悪の知識の木からは、決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう」という「創世記」の箇所です(2・16~17)。

 神が、最初の人間アダムに話された言葉をこう解説しています。

 「あなた方が造られたものであることを、善と悪の基準は、あなたがたではないことを、あなたがたが行う選択は、自身にも他者にも世界にも影響を与えるということを忘れてはならない」。

 私たちに最も大切なのは、自分の思いを後にして、神に聞き従おうとする謙遜な態度ではないでしょうか。