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霊における会話の実践から

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

 教皇フランシスコの業績のひとつは、会議の方法論として「霊における会話」によって行われるという考え方を示したことです。それは傾聴を重視し、他者への敬意に満ちた対話を通して、教会の未来を新しく築く試みです。

 「霊における会話」とは、具体的にはひとりひとりの意見を尊重する雰囲気の中で、個人の枠組みから、対人関係の枠組みへ、そしてグループの枠組みへと一回一回、その考えを発表するときに積み上げていく方法をとります。

 30年前の阪神淡路大震災を機に大阪高松教区で作り上げた新生計画においても、同じ会議の方法論を実践していました。その当時、「霊における会話」という実践は、いったい何を目指しているのかという疑問が私の中にはありました。

 その疑問は、どこかで体験したようなモヤモヤとして私の中にこの2年間ありました。そんな中、聖書の解説書を読んでいて、40年ほど前の神学校の授業で聞いたことが思い出されました。

 イエス・キリストの考え方は聖書に表れていますが、その捉え方には、三つのレベルがあるといいます。それは個人的なレベル、対人関係的なレベル、そして第三に社会的レベル、の三つというのです。

 例えば「愛しなさい」というイエスのルールを、第一に私は愛するという心を持って私の生活が成り立っているのか、というレベル。第二に隣人に対して愛することを実践しつつ生活しているのか、というレベル。そして、社会全体がイエスの愛のルールをどのように活かしているのか、というレベル。

 教皇フランシスコは「霊における会話」を実践することが、共同体や社会の中でイエスの言葉を深める上で活かされていくことを示されていたのです。