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フランシスコ教皇の来日

村田 佳代子

今日の心の糧イメージ

 2019年11月23日は快晴に恵まれ、東京ドームを目指して続々と人々が集まり、行列を作っていました。

 前回、ヨハネ・パウロ二世教皇が来日された時はまだドームではなく屋外の球場でした。しんしんと雪が降り積もっていたスタンドが思い出され、38年の歳月を実感したのです。

 ドーム内は既に超満員で、あちらこちらに遠い教会の友人の姿を見つけては、互いに大きく手を振って今日の喜びを伝えあっています。わが家は運よく家族3人が参加でき、祭壇正面に向かった2階席のとても良い場所に座ることが出来ました。

 定刻となり、フランシスコ教皇が白いオープンカーで入場。場内をゆっくりと一周される時には、所々で車を止め、周囲を取り囲む人々を祝福し、幼児を抱き上げ、大きく手を振って丁寧に進まれたのです。

 正面左右の大スクリーンに教皇様の表情が映し出され、会場内が気持ちを一つにして喜びを分かち合う時。皆、配られた小旗を振り続ける中、はたと気付いた私は、場内のスケッチを数枚描きました。

 ミサは、会場を揺るがすような聖歌の大合唱と、静まり返った祈り、教皇様の〝命のメッセージ〟とで、会衆全員が感動に包まれました。

 まさか半年後、世界中がコロナ禍のパンデミックに陥る日が来るなど誰も予想だにしなかったでしょう。

 ヨハネ・パウロ二世教皇は、1981年に大雪の東京と長崎でミサを捧げ、冬晴れの広島平和公園で「戦争は人間の仕業です」と反省を促されました。その後、バブル景気を迎える一方、各地で紛争や気候変動が起こり、混乱の世紀末となりました。

 今世紀になってフランシスコ教皇が来日。私はその来日の記録を大小二点の油彩画に描き、コロナ禍後の世界への警鐘として発表したのです。