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正しさと優しさ

中井 俊已

今日の心の糧イメージ

 「正しさ」と「優しさ」について考えると、自分の教師時代が思い出されます。

 教師時代、こうすべきだという「正しさ」に固執するあまり、その子の弱さをゆるしたり、その子の良さを認めたりする「優しさ」に欠けてしまうことがよくありました。子どもたちが下校した後、聖堂で一人祈っていた私は、「また叱り過ぎてしまった。もっとほめてあげればよかった」と反省したものです。

 本来あるべき「正しさ」からずれている場合、子どもをつい叱り過ぎてしまうことは、私に限らず他の教師や親御さんにもあるかもしれません。

 もう30年以上前から、日本には自己肯定感の低い子どもが多いと、様々な教育調査で指摘されてきました。日本の子どもは優秀で礼儀正しいのに、なぜ自分をダメと思う子が多いのでしょう。

 おそらくその原因の一つは、親や教師のその子どもに対する評価が低いため、あるいは子どもの個性が十分に認められてこなかったからではないでしょうか。

 ですから、幼稚園・保育園・学校などから頼まれる子育て講演会では、自己反省を踏まえて、子どもを認めてほめて、自信や自己肯定感をもたせることが大切だと伝えています。一時的な失敗、成長過程の特性を寛容に受け入れ、その子が将来伸び伸びと育つことを信じて、よいところを見いだし、ほめることが重要と思います。であれば、子どもは自分を好きになり、自信を持ち、やる気も増すようになります。学校の教育の現場から去り、執筆業をしている現在の私は、子どもたちと接することは、ほとんどなくなりました。

 そのかわり、まわりの大人に対して、「正しさ」に固執するよりも、「優しさ」をもって接しようと心掛けています。