▲をクリックすると音声で聞こえます。

正しさと優しさ

シスター 萩原 久美子

今日の心の糧イメージ

 「正しさと幸せは反比例する」という言葉を聞いたことがあります。正しいと思うことをみんなが実行すれば、社会はよりよくなり、平和になっていく。そしたら幸せになるのではないか、と思ってしまいます。しかし、現実はそうではないようです。

 今、世界では戦争や内戦が絶え間なく起こっています。その両者の言い分に耳を傾けると、どちらも「正しい」ことを言っている。それなのに幸せではないのはなぜでしょうか。

 正しさの定義は人それぞれなのかもしれません。だから自分が正しいという思いが、一方的に相手を批判することにつながったり、相手の思いを踏みにじって傷つけてしまったり。そして「あいつは間違っている。だから懲らしめを与えよう」という考えになり、争いに発展することもあるかもしれませんし、もう関わりを持たないということにつながる可能性もあります。

 正しさは自分を律していくためにも必要なことです。しかし、大事なことは、自分の「正しさ」だけを相手に押し付けるのではなく、相手も相手なりの「正しさ」を持っていることを知って、その正しさがどこからくるのかと思いをはせることのできる「優しさ」を持つことなのではないかと思います。相手の置かれている立場や状況を少しでも想像できると、自分の正しさだけが正解で相手が間違っているのではなく、そんな考え方もあるのかなと心にゆとりをもってかかわることができるかもしれません。

 「正しさ」の中にも「優しさ」があれば、もし本当に相手が間違っていれば、その注意の仕方にも優しさがこもるだろうし、自分が注意を受ける時にも素直に聞き入れられそうな気がします。一人ひとりがお互いを思いやる優しさをもって平和な世界を築いていけますように。