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正しさと優しさ

こいずみ ゆり

今日の心の糧イメージ

 昨年の秋、わたしは交通事故に遭いました。全治3週間程度の負傷でしたが、10日後にはダンス動画の撮影日が迫っていたのでとても焦りました。いつもお世話になっている接骨院に駆け込み、施術を受けながらも、わたしは夢中で自分でもできる「これさえすれば」的な処方を求めて、先生に質問を投げかけていました。冷やすのがいいのか、温めるのがいいのか、動かすのがいいのか、安静にするのがいいのか。

 そのたびに先生は「どんな処置もタイミングが大切です。その時々の身体の変化によってすべきことが変わってきます」と仰いました。

 「これが正しい」「これさえすれば」というものにすがりたくなりますが、それが今の症状や状況に合っていなければ逆効果になりかねないということを学ばせていただきました。

 むかし、砂漠で隠遁生活を送っていたアントニオという聖人のもとへ、彼を慕うたくさんの人が霊的指導を受けるために訪ねてきたそうです。そのとき、聖アントニオはそれぞれの人に合う異なるアドバイスを与えていたといいます。たとえば同じ悩みの相談でも、人によって正反対の指導をしたこともあったそうです。教えのベースは「神の愛」。「神への愛」であっても、一人ひとりの状況や性格に合わせておられたのでしょう。

 聖書のなかでイエスさまも、時に楽しく飲食をし、時に優しく触れ、時に怒り、時に沈黙し、と言った具合に、相手やシチュエーションに応じて様々な対応をされています。

 わたしたちもそれぞれの場所や相手の個性に合わせて〝 今 〟果たすことを考え、実行することで、神さまが望まれる愛とゆるしの世界をこの社会に広げる〝 平和のパン種 〟になれるのではないかと思います。