

それはもう40年近く前のことになります。当時私は東京に住んでいたのですが、転勤前に働いていた神戸の教会で知り合い、関東に引っ越してこられたご婦人の提案で、聖書の勉強会をすることになりました。
皆さんに呼びかけたところ、すぐに3人ほどのメンバーが集まりました。そしてほそぼそと勉強会を続けていたとき、同じように関西の教会から夫の転勤で東京に来られたご婦人が加わってくださいました。
そうして、お互いに気心がしれるようになった頃、後から入られたその方が、引越してきた時の体験を話してくださったのです。
彼女は言います。「夫の仕事の関係で引越したので、毎日出社する夫は、すぐにこちらの会社に溶け込めたようです。でも専業主婦の私は、しばらくの間、会う人会う人が初対面で、自分の名前、どこに住んでいるか、家族は、趣味は、と毎回同じ話をして、自分のことを説明しなければなりませんでした。」と。それが原因で、彼女は気を病み、外に出るのもおっくうになってきたのだそうです。
そんな時、聖書勉強会が開かれていると聞き、一念発起してやってきたというのです。
話しは続きます。「そしてあるとき気づきました。関西にいるとき、気が合わないと思っていた人なのに、自然に会話していたことを。気が合わないと思っていた彼女が、私そのものを受け入れて会話してくれていたのです。ギクシャクしていても、彼女は私の全体を認めていてくれたことに、今では感謝しているのですよ」と。
日常の些細な出会いの中に、実は彼女にとって素晴らしいものが含まれていた。この日常生活の小さな幸せ感を大切にしようと思い、ずっと心に納めているのです。