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幸せ

服部 剛

今日の心の糧イメージ

 月に一回、週末の夜、私は親しい詩人の仲間たちと『ランプの会』という詩の合評会を行っています。これはオンラインの画面上で自宅から参加する形式のもので、年に何度かは直接集まり、過去には旅先で合宿をしたこともありました。いつもはオンラインで行うため、それぞれが家で自作の詩を手に参加し、互いの詩を分かち合い、論じ合います。詩を書くことは個人的な作業ですが、信頼する仲間との合評会は、学びと気づきをいただける貴重なひと時です。

 『ランプの会』のメンバーは、最年少の私を含めて7人です。主に50~60歳代のベテラン詩人が、それぞれ自分の作品を朗読します。そして、仲間に作品についての合評をもらう時は、何とも言えない緊張感に包まれます。

 先日は、Aさんが幼い孫との温かな日々を綴った詩を、Bさんは風呂に入りながら在りし日の両親を回想する詩を、Cさんは病気になった高齢の義理の母に寄り添う詩を、それぞれ朗読し、深い分かち合いの時間となりました。

 私は、夜道で風が吹いて転がる空き缶に人の寂しさを重ねた詩を発表しました。さっそく仲間の助言や指摘などを受け、自分の詩を俯瞰して検証でき、有意義でした。

 合評を終えると何人かは退室し、私は時間の許す数人と、夜が更けるまで語らうことができました。昨年、旅立たれた詩人の大先輩である谷川俊太郎(たにかわしゅんたろう)さんのこと、若くして亡くなった朗読詩人のこと、自分の詩と人生について、忌憚(きたん)なく、とりとめもないまま語り合うことのできる仲間との時間は私にとって得がたいものです。自分の人生を賭ける詩に出会えたこと、その詩を語らう詩の友がいることは、かけがえのない私の幸せといえるでしょう。