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小さな幸せ

湯川 千恵子

今日の心の糧イメージ

 私は満90歳になった。高知県の片田舎で大寒のさ中、早産で小さく生まれ、湯たんぽと真綿に包まれて何とか生きたが、1年後、父が心臓病で急死。母も東京の実家に帰り、祖父と伯母を親代わりに皆に愛された甘えっ子だったが、心には寂しさの闇があった。

 高校時代、自己嫌悪で登校拒否。閉じ籠り、生きる力が萎えて死にたくなった。

 医者の伯父から届いたカナリアの飼育がペットセラピーとなった。

 雛が3回(かえ)り、15羽のカナリアの世話で私は元気になり、高校に復学。短大に進み卒業後、結婚。長女をカトリック幼稚園に入れて3か月後、一家で洗礼を受け、クリスチャンファミリーとなった。

 夫は満州に生まれ育ち、敗戦で価値観が逆転。何を信じてよいか分からぬ魂の闇に悩んでいたが、聖書から不変の真理を悟り、洗礼を熱望したのだ。最初反対した私も、心の奥の闇に神の光が必要で、夫に従った。

 洗礼が私の人生最大の恵みとなった。日常生活に神の愛の光が照らすと、人々の小さな親切や思いやりの奥に神の優しさや不思議がそっと隠されている事に気付き、感動させられる。気づかなければ、(すべ)て当たり前のこととして感動も感謝もないだろう。その感動は、4人の子育ての喜びはもとより、夫の癌告知などの悪い事でも神が共にいて下さる安心感で慰められ、励まされた。

 夫の帰天後、新しい生き方を求めてアメリカに留学。老年福祉を学ぶ大学生、大学院生となる中でも神に支えられた。

 帰国後、その体験を出版したり、「心のともしび」の放送原稿にもその時々の感動体験を小文にして伝えてきた。

 神の力と導きに勇気を頂き、チャレンジしてきた私は、主のみ手の中で生きる小さな幸せを感謝!感謝!の毎日である。