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小さな幸せ

こいずみ ゆり

今日の心の糧イメージ

 家の玄関先に小さなプランターを置いて、季節の花を少し植えています。ほんの少しの土いじりの時間にわたしは小さな幸せを感じています。

 まず、土の手入れをして苗を植えていると、道行く人が「かわいいお花ですね」「いつも癒されています。ありがとう」と声を掛けてくださるので、わたしの心はホッコリと温められます。

 また、役目を終えた花や葉があれば「おつとめごくろうさま。ありがとう」と呟きながら摘み取るのですが、そうしていると、自分を含め、すべてのいのちが精一杯咲いて、その使命が終われば神さまのみ手の中に帰り、次の新しい世代に場所を受け渡していくという流れを想い起こすことができます。

 そしてありがたい恵みがもう一つあります。それは、道行く人の足元に(かが)んで土を触っていると、自分が文字通りいちばん小さな者であると感じることができるのです。

 日頃、ふつうに立ち歩いて生活していると、頭を垂れて(へりくだ)ることを忘れがちです。無意識のうちにも心のなかで尊大な思いが膨らんできて、まるで自分が"一人前の人間"という錯覚に陥ってしまっていることもあるでしょう。

 旧約聖書では私たち人間が(ちり)から造られ、這いまわって塵を食べる存在で、塵芥(ちりあくた)に過ぎないことが述べられています。また、新約聖書ではイエスさまが屈んで地面に触れたり、背を屈めて弟子たちの足を洗われたりしました。

 道行く人の足元だけが見える目線になると、自分が本来小さな者で、すべての人に仕えるようイエスさまに呼ばれていることを思い出します。

 そういう恵みをいただけるので、わたしにとって花の手入れや土いじりは"小さな幸せ"を超えて、"大きな幸せ"をいただく時間とも言えるでしょう。