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母の心・父の心

越前 喜六 神父

今日の心の糧イメージ

 両親を早く亡くした私が、父母の心を語ることなど、絶対にできないと長い間、思っていました。

 けれども、ある素晴らしい親御さんに出会い、親交を深めているうちに、母の心や父の心というものを少しは知ることができるようになりました。そしてこの経験は、カウンセラーを仰せつかったとき、大変役に立ち、その認識を深めました。

 私見ではありますが、母心というのは、無条件の受容ができる、ひと言で言ってしまえば「わが子は皆、良い子」です。

 これに対し父の心は、「良い子はわが子、良くない子はわが子ではない」とする傾向が強いように思います。

 私は、生まれて直ぐに母を亡くしましたので、母の慈愛を経験していません。記憶にある父は割合立派な人で、やはり小さい時から少し厳しいと感じていて、私はいつも良い子でいなければならないと思っていました。そして、母の愛情を経験できなかった私は不幸な人間だと思い込んでいました。

 ある時、姉を介して、カトリックという宗教を知った私は、主イエスの母である聖母マリアを知るようになりました。

 それからというもの、聖母マリアを私の母と信じて、熱心にお祈りしました。私は男子小学校の低学年のとき、学校でよくいじめられたことがあります。それで、ついに学校に行くのが嫌になり、休もうかと思いましたが、思い直して聖母マリア様のご絵の前で、我が母に打ち明けるように話し、お祈りしました。

 「マリア様、助けてください。いじめられるので、学校には行きたくありません」と聖母マリアの慈愛に信頼して祈りました。すると私の心は慰められ、不思議といじめられることも少なくなりました。