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受けとめる

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

 何事においても、打たれ強い人と打たれ弱い人がいるようだ。少し前に流行った言葉だが、「こんにゃくメンタル」と「豆腐メンタル」と言うらしい。傷つきにくく、困難をぷりぷりはね返すのはこんにゃくメンタルの持ち主、反対に失敗や他人からの批判に弱く、心が崩れてしまい、立ち直るのにも時間がかかる人は豆腐メンタルというわけだ。

 私自身も豆腐メンタルの一人で、他人の言葉や行動の奥にある悪意を敏感に感じては、落ち込んだり、仕事が捗らなくなったりする。

 悪意というものは、まともに受け止めてはいけない、避けるしかない。そう思っても、豆腐もこんにゃくも、悪意も善意も皆同じ鍋でぐつぐつ煮られているのがこの世というものなのである。

 そんな私たちが本当に受け止めるべきものは、傷つき、悩んでいる自分自身ではないかと思う。まずは心も身体も疲れている自分に気づいて、いたわってやりたい。自分が自分を介抱するとはおかしなことのようだけれど、自分こそが最もよき理解者であり、助け手ではないだろうか。

 自分自身を受け止めてみると、その未熟さや弱さがよくわかる。もがきながら誠実に生きようとしていることもわかる。その自分の弱さを受け止め、すべてを引き受けて、自分自身の強い味方になってやるのである。

 人にはいつか人生を締めくくる時期が訪れる。悩まされていた仕事や人間関係から解放され、自分自身と静かに向き合う時間が。私たちは過ごしてきた日々の歴史を振り返り、自分自身を改めて受け止めることになるだろう。

 その時、どんな気持ちになるだろうか。今の私には想像もつかないが、すべてのことへの感謝と自分への小さなねぎらいがあれば、それでいいような気がする。