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受けとめる

越前 喜六 神父

今日の心の糧イメージ

 皆さんもよくご存じのように、人生にはままならぬことが沢山起こります。豪雨,地震、火事、事故などは誰も望んでいません。何が良いか悪いか、とかなどには関係ありません。ではどうしたら良いでしょうか。

 今は故人になられましたが、長年親交のあったある禅宗のお坊さんが言われた言葉が忘れられません。実例をひとつ申し上げますと、私は東北の日本海寄りの県に生まれ育ったので、寒さや大雨が大嫌いでした。

 ある時、そのことを、そのお坊さんに話したときに、こう話されました。「雨が降っていたら、『雨が降っていますね』と、事実をあるがままに受けとめたらいかがですか。雨が嫌だとか、寒さが嫌だとか、自分の感情に囚われていたら、苦しむばかりでしょう。事実をあるがままに受けとめられれば、空の雲のように苦しみは自然に流れてゆくでしょう」と。

 このお話を伺ってから、私は物事をあるがままに受けとめるように心掛けています。

 かつて大学のカウンセラーに任じられたとき、カウンセラー研究会に入って、そこで、学んだのも、無条件の受容ということでした。クライエント、すなわち相談者の話を、是非や善悪の判断をしないで、あるがままに聴くということの大切さでした。

 それからというもの、学生たちの悩み事を、良いとか悪いとかで判断しないで、尊敬心をもって聴くようにしました。決して批判しないで、「それは大変だったね」とか、「辛かったでしょうね」とか、ただ相手の話に共感しながら聴くように努めました。

 するとその効果は絶大なものがありました。

 有名なカウンセリングの先生が言っているように、クライエント自身には自然治癒力があるのです。聞き手が受容すると、それが働くのだと思います。